第13回全世界空手道選手権大会・試合レポート
2023年11月21日
11月17日(金)18日(土)19日(日)、東京都体育館にて「✚日本赤十字社 災害義援金チャリティー 第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会」が開催され、男子166名、女子50名の計216名の選手が出場して体重無差別の空手世界一の座が争われた。
今大会は1994年に逝去した大山倍達総裁の生誕100年を祝う記念大会として開催され、同時に大山総裁が創設した国際空手道連盟(I.K.O.)の「極真空手道においては、人種、民族、国家、政治、思想、宗教などによる差別がなく、全ての人々が平等の権利を有することを旨とし、国際交流をもって全世界の平和友好を目指す」という連盟規約に照らし合わせ、現在世界中で起こっている戦争や紛争などの政治的理由によって極真空手を通じての交流が制限されてはならない、むしろこういう時代だからこそ文化的な交流の場が必要であり、世界大会を平和的な交流の場にしたいとの意識から、今大会では各国の国旗は使用せず、各選手が国を代表する立場ではなく、選手が所属する各国・各地域のI.K.O.の代表として平等に参加する権利を有するという方針のもとで実施された。
試合は、男女ともに初日に1回戦、2日目に2回戦と3回戦が行われ、3日目には男子32名、女子8名が進出した。予選の2日間では、男子で4年前の前回大会で注目された204cm、160kgのナシメント・イカロ(I.K.O.BRAZIL)が敗退、I.K.O.JAPAN勢は昨年の全日本大会ベスト8の加賀健弘、石﨑恋之介、清水祐貴や今年の全日本体重別軽量級優勝の小林健人、同中量級優勝の飯塚翼も初日で姿を消したが、それ以外の有力と見られる各ブロックの先頭と最後尾の選手はいずれも順当に勝ち上がった。女子は勝ち上がった8名のうち、I.K.O.JAPANが2名、I.K.O.FRANCEが1名、残る5名はI.K.O.RUSSIA勢となった。
決勝戦が行われた大会3日目の男子、世界大会初出場の昨年全日本3位で上位進出が期待された大秦稜司(I.K.O.JAPAN)は4回戦でポリアコフ・イリヤ(I.K.O.RUSSIA)に苦戦を強いられ判定負け。同じく世界大会初出場の佐藤拓海、山上大輝、岡部慎太郎(3名ともI.K.O.JAPAN)はそれぞれ持ち味を発揮して勝ち進んだが、いずれもトーナメント端の優勝候補の選手に一歩及ばず。第11回、第12回大会ベスト8の荒田昇毅(I.K.O.JAPAN)は5回戦でフェドシーフ・アレクセイ(I.K.O.RUSSIA)に一瞬の隙を衝かれて下段突きを決められ技有りを取られての敗退となった。また、欧州の新鋭として注目されたボゴミル・コストフ(I.K.O.BULGARIA)は4回戦でコバレンコ・コンスタンティン(I.K.O.RUSSIA)を相手に善戦したものの、技を決め切れずに最後は地力の差を示されて敗れた。
男子準々決勝、まずAブロックは昨年全日本2連覇の西村界人(I.K.O.JAPAN)が今年のロシア無差別大会優勝者のエキモフ・マクシム(I.K.O.RUSSIA)に本戦4-0判定勝ち。続いてBブロックは前回3位のルジン・アンドレイが同7位ザガイノフ・イゴール(ともにI.K.O.RUSSIA)と再延長にわたる熱戦を展開し、最後は5-0判定勝ち。Cブロックは前回5位で昨年11月の全日本準優勝のコバレンコ・コンスタンティン(I.K.O.RUSSIA)は優位に試合を進めながら今年と昨年のヨーロッパ・ウェイト制重量級優勝者のトゥセウ・アントニオ(I.K.O.FRANCE)に電光石火の上段膝蹴りを決められて技有りを取られてトーナメントから姿を消した。最後のDブロックは前回準優勝者で今年全日本体重別重量級を制したイエロメンコ・アレクサンダー(I.K.O.RUSSIA)が若いフェドシーフ・アレクセイに対し危なげない内容で5-0判定勝ち、準決勝に進んだ。
男子準決勝は、まず西村が前回大会5回戦で敗れたルジンと対戦。2人はこれが3度目の対戦となり、これまでの戦績はルジンの2勝だったが、今回はルジンの反則による減点もあって西村が優勢勝ち。トゥセウとイエロメンコの一戦はイエロメンコが上段の内廻し蹴りで技有りを奪い決勝に駒を進めた。
男子3位決定戦はトゥセウがドクターストップによりルジンの不戦勝で、ルジンは前回に続いての3位入賞が確定。決勝戦は西村とイエロメンコという優勝候補本命同士の激突となり、本戦、延長と熱戦を展開したが、イエロメンコがわずかに上回り、延長判定3-0で優勝。イエロメンコは第10回大会以来、4大会目で悲願の初優勝を遂げた。
3日目の女子は、準々決勝で昨年全日本優勝者・鵜沢菜南(I.K.O.JAPAN)が前回3位のエルハイモワ・シャイネス(I.K.O.FRANCE)に延長戦4-0判定勝ち。鵜沢は準決勝でも身長で上回るコズロワ・エカテリーナ(I.K.O.RUSSIA)を5-0の判定で下して決勝に進出。反対側のブロックは前回準優勝者の佐藤七海(I.K.O.JAPAN)が準々決勝でザソリナ・クセニア、準決勝でザベリナ・エリザベータ(ともにI.K.O.RUSSIA)をいずれも4-0の判定で破って決勝に。女子は前回に続いてI.K.O.JAPAN勢同士の決勝の顔合わせになった。
女子3位決定戦は体格や攻撃力で優るザベリナがコズロワを判定5-0で下して3位。迎えた決勝戦は、鵜沢と佐藤の2020年全日本、2022年全日本に続く3度目の決勝対決。これまで1勝1敗の両者は今回も再延長に及ぶ白熱した試合を繰り広げ、今年から試合の判定基準に盛り込まれた防御技術に優る佐藤が再延長で3-2の判定勝ちを収め念願の初優勝となった。2011年の第10回大会からスタートした女子無差別世界大会で156cm、54kgの軽量級の選手が優勝したのは今回が初。佐藤の優勝は、男女ともに強豪選手の大型化が進む昨今にあって、武道の醍醐味の一つである『小よく大を制す組手』、あるいはI.K.O.極真ルールの可能性を改めて示すものとなった。
✚日本赤十字社 災害義援金チャリティー
第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会
2023年11月17日(金)~19日(日)/東京体育館
■男子
優勝 1st Place/イエロメンコ・アレクサンダー EREMENKO ALEKSANDR(I.K.O.RUSSIA)
準優勝 2nd Place/西村界人 NISHIMURA KAITO(I.K.O.JAPAN)
3位 3rd Place/ルジン・アンドレイ LUZIN ANDREI(I.K.O.RUSSIA)
4位 4th Place/トゥセウ・アントニオ TUSSEAU ANTONIO(I.K.O.FRANCE)
5位 5th Place/ザガイノフ・イゴール IGOR ZAGAINOV(I.K.O.RUSSIA)
6位 6th Place/コバレンコ・コンスタンティン KOVALENKO KONSTANTIN(I.K.O.RUSSIA)
7位 7th Place/エキモフ・マクシム EKIMOV MAKSIM(I.K.O.RUSSIA)
8位 8th Place/フェドシーブ・アレクセイ FEDOSEEV ALEKSEI(I.K.O.RUSSIA)
敢闘賞/岡部慎太郎 OKABE SHINTARO(I.K.O.JAPAN)
技能賞/佐藤拓海 SATO TAKUMI(I.K.O.JAPAN)
山上大輝 YAMAGAMI DAIKI(I.K.O.JAPAN)
試割賞/ゴリウシキン・ダニル GORIUSHKIN DANIL (I.K.O.RUSSIA=28枚)
若獅子賞/コストフ・ボゴミル KOSTOV BOGOMIL(I.K.O.BULGARIA)
■女子
優勝 1st Plece/佐藤七海 SATO NANAMI(I.K.O.JAPAN)
準優勝 2nd Place/鵜沢菜南 UZAWA NANA(I.K.O.JAPAN)
3位 3th Place/ザベリナ・エリザベータ ZABELINA ERIZAVETA(I.K.O.RUSSIA)
4位 4th Place/コズロワ・エカテリーナ KOZLOVA EKATERINA(I.K.O.RUSSIA)
敢闘賞/カザリアン・アレクサンドラ KAZARIAN ALEKSANDRA(I.K.O.RUSSIA)
技能賞/佐藤七海 SATO NANAMI(I.K.O.JAPAN)
若獅子賞/スベトロワ・エカテリーナ SVETLOVA EKATERINA(I.K.O.RUSSIA)
イッサ・マリナ ISSA MARINA(I.K.O.BRAZIL)
森岡優海 MORIOKA YUMI(I.K.O.JAPAN)
小木戸琉奈 KOKIDO RUNA(I.K.O.JAPAN)
所 羽奈 TOKORO HANA(I.K.O.JAPAN)