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 2010年から昨年2015年まで、体重無差別の全日本大会・全世界大会で優勝した日本選手は2013年第45回大会の安島喬平選手のみで、他の5大会ではロシア選手が3回、ヨーロッパ選手が2回優勝しています。今や全日本大会であっても、日本選手が優勝するのは非常に困難な状況にあると言わざるを得ません。しかし、今大会は来年開催される第6回世界ウェイト制大会の日本代表選考大会であり、日本にとっては3年後の無差別世界大会に向けて新たなスタートを切る大事な大会になります。私の立場から言えば、何としても日本選手のチャンピオン誕生を願うばかりですが、優勝の行方を左右するのが今大会にエントリーしている強豪外国人選手です。

ゼッケン16番/アントニオ・トゥセウ
フランス/初段
身長184cm/体重82kg/25歳
◎主な戦績
2014年欧州ウェイト制中量級優勝
2016年オールアメリカン・オープン3位

 まずAブロックから見ていくと、髙橋佑汰選手のところでも触れたアントニオ・トゥセウ選手(ゼッケン16番)は、昨年の第11回世界大会準優勝のジマ・ベルコジャ選手の後輩にあたり、2014年のヨーロッパ・ウェイト制大会中量級優勝者で今年6月のオールアメリカン・オープンでは3位に入賞して自信を付けています。日本においても、一昨年の第46回全日本大会に初出場して小沼隆一選手と激闘を演じたことは記憶に新しいところです。順当に勝ち進めば、3回戦で中村昌永選手との対戦が考えられますが、身長184cmで手足の長いトゥセウ選手に対し、中村選手は168cm。トゥセウ選手が上段膝蹴りを狙いやすい位置に中村選手の顔があるということになります。中村選手が勝つにはトゥセウ選手の長いリーチから繰り出される技を上手く捌いて接近戦に持ち込み、自分の攻撃を確実に当てていかなければ勝機はありません。対照的な身長、空手スタイルの二人ですが、だからこそ意外な決着が待っているということも考えられます。

ゼッケン32番/アショット・ザリヤン
ロシア/弐段
身長170cm/体重75kg/22歳
◎主な戦績
2015年第11回世界大会5位
2016年ヨーロッパ・ウェイト制中量級優勝

 そしてAブロックの最後には昨年世界大会で5位に入賞したアショット・ザリヤン選手(ゼッケン32番)が控えています。22歳と若くて実績のあるザリヤン選手は、170cm、75kgのいわば日本選手ともほとんど変わらないサイズですが、信じられないような身体能力を発揮して昨年は樋口陽太選手から後ろ廻し蹴りで一本勝ち、続いて安島喬平選手を本戦判定で下し、あのダルメン・サドヴォカソフ選手とも互角の戦いを繰り広げました。また、今年5月のヨーロッパ・ウェイト制大会では中量級に出場して、準決勝・決勝で一本勝ちを奪うなどほぼ一方的な展開で優勝、ベストテクニック賞に輝きました。日を追うごとに急成長を遂げているザリヤン選手の空手は、体格的に見ても日本選手が目指すべきスタイルであるとも言えますし、ある意味今大会で最も注目される外国人選手であるとも言えます。ザリヤン選手の特長は、非常に一発一発の攻撃が強く、連打で畳み込むというよりもしっかりした技で相手にダメージを与えながら攻めていくタイプで、それでいて自分の間合いをキープしながら相手の攻撃を外すフットワークも持っています。ただし、付け入るスキが全くないわけではありませんし、よくよく研究していくと、どんなに完璧そうに見えるファイターにも必ず苦手とする部分があるものです。私事で一つ言わせてもらえば、私の弟子である上田海斗(ゼッケン25番)が3回戦でザリヤン選手と対戦する可能性があり、彼は打倒ザリヤンのための稽古を積み、十分な対策を練って秘策を授けてありますので、ぜひ本番の試合を楽しみにしていただきたいと思います。

ゼッケン48番/エルダー・イスマイロフ
ウクライナ/初段
身長180cm/体重88kg/22歳
◎主な戦績
2013年第5回世界ウェイト制軽量級2位
2015年ヨーロッパ・ウェイト制中量級優勝
2016年ヨーロッパ・ウェイト制軽重量級優勝

 続いてBブロックには先の荒田昇毅選手のところでも述べたエルダー・イスマイロフ選手(ゼッケン48番)とアントン・グリエフ選手(ゼッケン49番)が有力です。
 まずイスマイロフ選手は以前から非常に優れたテクニックを発揮する選手で、昨年の世界大会でも3日目の4回戦まで進出しました。また今年5月のヨーロッパ・ウェイト制大会では昨年80kg台前半だった体重を80kg台の後半までアップして軽重量級に出場し、ロシアの強豪イヴァン・メゼンツェフ選手と決勝を争い、本戦で完封して判定勝ちを収めて2015年の中量級に続いて2階級制覇を達成しました。もともと技にスピードとキレがあり、体重を上げたことでその技にさらに威力が加わったということですから、対する日本選手はただ単に相手に打ち勝つという組手ではなく、きちんとした対策を立て、戦略を持って臨まなければいけません。

ゼッケン49番/アントン・グリエフ
ロシア/2級
身長193cm/体重97kg/18歳
◎主な戦績
2015年ワールドユース・スーパーエリート16歳17歳男子
+75kg級優勝
2016年ロシアンカップ重量級優勝

 アントン・グリエフ選手は昨年7月のブラジルでの団体戦決勝戦のユース代表戦で南原健太選手と対戦し、南原選手に打ち勝って判定勝ちを収め、11月のワールドユース・スーパーエリートでも+75kg級で優勝し、いよいよ満を持しての全日本デビューになります。193cm、97kgの大きな体から連打を繰り出して相手を圧倒するのが組手の特徴で、すべての攻撃力が高いレベルにあります。現在18歳ということですから、このまま順調に成長していけば3年後の21歳で迎える第12回世界大会ではロシアの有力なエース候補となって優勝争いに食い込んでくることは間違いないでしょう。大型のグリエフ選手が、今大会でルール改定をどのように活用してくるのかといった点も興味深いですし、小林龍太選手(ゼッケン52番)や中島千博選手(ゼッケン56番)といった日本勢が大きな相手に対して、無差別ならではの“小よく大を制す”戦いを見せてくれるのかといった所にも注目したいと思います。

ゼッケン97番/ゴデルジ・カパナーゼ
ロシア/参段
182cm/90kg/30歳
◎主な戦績
2011年第10回世界大会3位
2012年第44回全日本大会2位
2013年第5回世界ウェイト制重量級2位
2016年オールアメリカン・オープン優勝

 そしてDブロックには、ゴデルジ・カパナーゼ選手(ゼッケン97番)とアレハンドロ・ナヴァロ選手(ゼッケン113番)という二人のベテランがいます。
 カパナーゼ選手は一時は引退の噂が出るなど試合から遠ざかっていた時期もありましたが、昨年の第11回世界大会で復帰して5回戦に進出。今年6月には全日本ウェイト制大会、オールアメリカン・オープンとルール改定直後の2大会に連続出場して、オールアメリカンでは3度目の挑戦にして初優勝を遂げました。爆発的な攻撃力は健在で、相手の内股を狙った下段廻し蹴り、強烈な中段廻し蹴り、鋭く回転する後ろ廻し蹴りなどは衰えを知りません。日本選手は3回戦で6月の全日本ウェイト制中量級で初優勝した山田拓馬選手(ゼッケン104番)がどれだけ粘るか、また4回戦で山川竜馬選手(ゼッケン112番)との対戦となれば、これは6月のウェイト制大会の再戦ですからお互いに負けられない試合になるでしょう。

ゼッケン113番/アレハンドロ・ナヴァロ
スペイン/参段
180cm/92kg/40歳
◎主な戦績
2007年第9回世界大会6位
2012年第44回全日本大会優勝
2013年第5回世界ウェイト制軽重量級優勝
2015年ヨーロッパ・ウェイト制重量級優勝

 ナヴァロ選手は、2012年に第44回全日本大会優勝、翌2013年は第5回世界ウェイト制軽重量級優勝、他に世界大会や全日本大会での入賞経験があり、ヨーロッパ大会では無差別・体重別を問わず数々の優勝・入賞歴がある言わば40歳のレジェンド的存在です。そのナヴァロ選手に対して、大会の見所という点で言えば2回戦の相手と見られるベイ・ノア選手(ゼッケン115番)はキックボクシング大会の新人王トーナメントで優勝して勢いに乗っていますし、3回戦の相手はヨーロッパ・ウェイト制大会軽量級優勝者で9月から総本部に空手留学しているキリル・プサリョフ選手(ゼッケン117番)とナヴァロ選手と同じ40歳の福井裕樹選手(ゼッケン120番)の勝者が有力になります。ナヴァロ選手が全盛時に見せたような終盤に畳みかける攻撃力が今大会でも発揮できれば、それら包囲網を突破して上位進出ということも考えられます。

 いずれにしても私の立場から言わせてもらえば、今大会では何としても日本人の全日本チャンピオンの誕生が絶対条件となります。目標は日本選手のベスト4独占、久しく見ていなかった日本選手同士による決勝対決を実現させ、改定されたルールを十位に活用した内容の濃い試合で来年の世界ウェイト制大会につながることを期待したいと思います。(日本代表監督/木山 仁)

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