第7回全世界体重別大会レポート
2025年4月27日
4月27日(日)、東京体育館において「2025第7回全世界体重別空手道選手権大会」が開催された。第7回大会は通常であれば2021年に行われるはずだったが、コロナ禍によって中止を余儀なくされ、今回が2017年の第6回大会以来8年ぶりの開催。名称も従来の「全世界ウェイト制大会」から「全世界体重別大会」に一新され、今年創立61年目を迎えた国際空手道連盟 極真会館の新たなスタートを象徴する重要な大会となった。
また、今大会は男子4階級・女子3階級で実施され、男子は64名・女子42名の合計106名で争われ、一昨年の第13回世界大会入賞者や昨年第56回全日本大会入賞者をはじめ、各国・各地域から選抜された各階級のトップ選手が出場した。
まず男子軽量級は昨年第39回全日本ウェイト制大会軽量級優勝者の樋口知春(I.K.O.日本)と同準優勝者の小林健人(I.K.O.日本)がトーナメントの先頭と最後尾に配置され、優勝候補の筆頭格と目されたが、樋口が2回戦で今年2月のロシア国際大会で優勝したチチナゼ・ティムール(I.K.O.ロシア)に判定負けを喫し、決勝戦は小林とチチナゼの一戦に。打撃力のあるチチナゼの技を小林はスピードと素早い足捌きでかわし、的確に有効打を返す展開で本戦判定勝ち。軽量級の第一人者として活躍してきた小林が、体重別ながら世界を冠した王座を初めて手中に収めた。
男子中量級は、昨年第56回全日本大会6位のポリアコフ・イリア(I.K.O.ロシア)と昨年ヨーロッパ無差別大会で優勝したコセンティーノ・ジノ(I.K.O.フランス)が2回戦で対戦するなど好カードが続出したが、最終的にはポリアコフとI.K.O.日本の飯塚翼、大秦稜司、谷川蒼哉の3選手がベスト4に進出した。まず準決勝第1試合で飯塚とポリアコフが延長2回に及ぶ接戦を展開し、ポリアコフの反則による減点で飯塚が優勢勝ち。第2試合では大秦と谷川が手に汗握る一進一退の攻防を繰り広げ、一瞬の隙を衝いた大秦が左上段廻し蹴りで技有りを奪い決勝戦へ。2022年第54回全日本大会以来の再戦となった飯塚と大秦の試合は、前回に続き大秦が飯塚を下して念願の初優勝となった。

▼男子軽量級決勝戦
〇小林健人(I.K.O.JAPAN)
本戦判定勝ち5-0
×チチナゼ・ティムール(I.K.O.RUSSIA)

▼男子中量級決勝戦
〇大秦稜司(I.K.O.JAPAN)
本戦判定勝ち4-0
×飯塚 翼(I.K.O.JAPAN)
男子軽重量級は、本命視された第13回世界大会8位のフェドシーフ・アレクセイ(I.K.O.ロシア)が2回戦で昨年第39回全日本ウェイト制大会優勝者の山上大輝(I.K.O.日本)に上段前蹴りを決められて敗退。波乱の予感が漂う中で、世界体重別大会4度目の出場となるシルヴァ・ジオゴ(I.K.O.ブラジル)がヨーロッパの新鋭ボゴミル・コストフ(I.K.O.ブルガリア)から得意の左上段廻し蹴りで技有り、大秦零司に下段突きを決めて2試合連続技有り優勢勝ちで準決勝進出。反対側のブロックではヨーロッパ体重別大会で優勝したナヴァロ・アレハンドロ(I.K.O.スペイン)が準決勝に勝ち上がるなど、ベテラン勢が健在ぶりを示した。決勝戦は準決勝でシルヴァに一本勝ちした昨年第56回全日本大会5位のグセイノフ・ラシャド(I.K.O.ロシア)と山上大輝の対戦となり、序盤は互角ながらも、中盤以降はグセイノフの力強い攻撃の前に山上の動きが止まる場面が目立ち、グセイノフが本戦判定勝ちで栄冠を掴んだ。
注目の男子重量級、今大会限りの引退を公言していた荒田昇毅(I.K.O.日本)は念願だった西村界人(I.K.O.日本)との準決勝に辿り着く前の2回戦でエキモフ・マクシム(I.K.O.ロシア)の猛攻を浴びて無念の判定負け。逆にエキモフにとっては昨年第39回全日本ウェイト制大会重量級決勝で敗れた荒田に借りを返す一戦となった。一方、1年半ぶりの復帰戦に臨んだ西村は大型の自分(188cm/110kg)よりもさらに体格の大きいマクシモビツ・フィリップ(I.K.O.ポーランド/192cm/102kg)とゴリウシキン・ダニル(I.K.O.ロシア/195cm/112kg)を退け、準決勝でも荒田を破ったエキモフに判定で競り勝って決勝戦に駒を進めた。反対側のブロックでは第13回世界大会3位のルジン・アンドレイ(I.K.O.ロシア)と同4位のトゥセウ・アントニオ(I.K.O.フランス)の試合が2回戦で実現。ここでトゥセウを退けたルジンは、次の準決勝ではコバレンコ・コンスタンティン(I.K.O.ロシア)と激突。試合は両者譲らず、重量級らしい白熱の攻防が繰り返され、再延長戦でコバレンコが下段突きを決めて技有りを奪い快勝した。決勝は西村とコバレンコという対戦成績1勝1敗で、ともに無差別全日本大会で2度優勝しているライバル同士の一戦になったが、最後は連打の猛攻を仕掛けてコバレンコが判定勝ちで優勝。昨年の全日本チャンピオンであるコバレンコが意地を見せる結果となった。

▼男子軽重量級決勝戦
〇グセイノフ・ラシャド(I.K.O.RUISSIA)
本戦判定勝ち5-0
×山上大輝(I.K.O.JAPAN)

▼男子重量級決勝戦
〇コバレンコ・コンスタンティン(I.K.O.RUSSIA)
本戦判定勝ち4-0
×西村界人(I.K.O.JAPAN)
続いて女子軽量級は、今年2月のロシア国際大会で優勝したカザリアン・アレクサンドラ(I.K.O.ロシア)が準決勝で昨年第39回全日本ウェイト制大会4位の森岡優海(I.K.O.日本)に判定勝ちで決勝戦へ。反対側からは準決勝で昨年の全ロシア大会優勝者アルテメワ・ナタリア(I.K.O.ロシア)から上段前蹴りで技有りを奪った鈴木千凌(I.K.O.日本)が勝ち上がり、決勝戦はカザリアンと鈴木の一戦に。身長173cmのカザリアンに鈴木は終始苦戦を強いられ、判定でカザリアンが王座を勝ち取った。
女子中量級は、1回戦で優勝候補本命のザソリナ・クセニア(I.K.O.ロシア)が失格となってトーナメントから姿を消す中で、昨年ヨーロッパ無差別で優勝したハラス・ジャスミン(I.K.O.ハンガリー)や昨年南米大会優勝者のイッサ・マリナ(I.K.O.ブラジル)らまだ10代の新世代が活躍。優勝は、昨年第39回全日本ウェイト制大会優勝者の小城みなみ(I.K.O.日本)が準決勝で第13回世界大会4位のコズロワ・エカテリーナ(I.K.O.ロシア)を撃破し、その勢いで決勝戦では知念琉花(I.K.O.日本)を延長で退けて優勝するなど、自身の成長した姿を証明した。
女子重量級は10名がエントリーする中で、昨年第56回全日本決勝を争った宮本神(I.K.O.日本)とザベリナ・エリザベータ(I.K.O.ロシア)という本命同士の決勝戦となり、宮本が延長まで粘ったものの、最後はザベリナの地力が優り、全日本王者の貫禄を示す盤石の優勝だった。

▼女子軽量級決勝戦
〇カザリアン・アレクサンドラ(I.K.O.RUSSIA)
本戦判定勝ち4-0
×鈴木千凌(I.K.O.JAPAN)

▼女子中量級決勝戦
〇小城みなみ(I.K.O.JAPAN)
延長戦判定勝ち5-0
×知念琉花(I.K.O.JAPAN)

▼女子重量級決勝戦
〇ザベリナ・エリザベータ(I.K.O.RUSSIA)
延長戦判定勝ち5-0
×宮本 神(I.K.O.JAPAN)
各階級の入賞者の顔ぶれは日本とロシアを筆頭に、スペイン、ブラジル、アメリカから各1名と、依然として日本対ロシアの2強という見方ができる一方、ヨーロッパとブラジルが再び多くの強豪を輩出する機運の高まりを見せ、イランやクウェートといった中東地区の成長、オーストラリアやニュージーランドのオセアニア地区からも優れた選手が現れるなど、I.K.O.全体の選手のさらなる躍進を予感させるものだった。2年後の2027年第14回世界大会が果たしてどのような展開を見せるのか、期待して見守りたい。
また、今大会は2023年の第13回世界大会と同様に極真会館の活動目的である「世界平和」がテーマの一つとなっており、今大会では陸上自衛隊中央音楽隊のソプラノ歌手・鶫真衣氏による開会式の国歌独唱と準決勝終了後には大会祝賀プログラムとして、新たな旅たちを意味する「Time to say goodbye」、反戦をテーマにした「一本の鉛筆」、石川県出身の鶫氏が災害に苦しむ被災地への想いをオーバーラップさせた「ふるさと」の3曲の歌唱が披露され、多くの観客の心に平和の大切さや命の尊さを訴えかけた。

各階級優勝者。左から女子軽量級/カザリアン・アレクサンドラ、女子中量級/小城みなみ、女子重量級/ザベリナ・エリザベータ、男子重量級/コバレンコ・コンスタンティン、男子軽重量級/グセイノフ・ラシャド、男子中量級/大秦稜司、男子軽量級/小林健人
2025 第7回全世界体重別空手道選手権大会 入賞者
The 7th World Weight Category karate Championships 2025 Results
◎第7回全世界体重別大会 トーナメント勝ち上がり
■男子軽量級 (Men’s Light Weight -70kg)
優勝/小林健人 (I.K.O.日本/東京城北支部)
1st Place/KOBAYASHI KENTO (I.K.O.JAPAN)
準優勝/チチナゼ ティムール (I.K.O.ロシア)
2nd Place/CHICHINADZE TIMUR (I.K.O.RUSSIA)
3位/金子雄大 (I.K.O.日本/東京城西支部)
3rd Place/KANEKO YUDAI(I.K.O.JAPAN)
4位/ナカノ ソウタ (I.K.O.アメリカ)
4th Place/NAKANO SOTA (I.K.O.USA)
■男子中量級 (Men’s Middle Weight -80kg)
優勝/大秦稜司 (I.K.O.日本/京都支部)
1st Place/OHATA RYOJI (I.K.O.JAPAN)
準優勝/飯塚 翼 (I.K.O.日本/東京城北支部)
2nd Place/IIZUKA TSUBASA (I.K.O.JAPAN)
3位/ポリアコフ イリア (I.K.O.ロシア)
3rd Place/POLIAKOV ILIA (I.K.O.RUSSIA)
4位/谷川蒼哉 (I.K.O.日本/総本部道場)
4th Place/TANIGAWA SOYA (I.K.O.JAPAN)
■男子軽重量級 (Men’s Heavy Weight -90kg)
優勝/グセイノフ ラシャド (I.K.O.ロシア)
1st Place/GUSEINOV RASHAD (I.K.O.RUSSIA)
準優勝/山上大輝 (I.K.O.日本/東京城北支部)
2nd Place/YAMAGAMI DAIKI (I.K.O.JAPAN)
3位/ナヴァロ アレハンドロ(I.K.O.スペイン)
3rd Place/NAVARRO ALEJANDRO (I.K.O.SPAIN)
4位/シルヴァ ジオゴ (I.K.O.ブラジル)
4th Place/SILVA DIOGO (I.K.O.BRAZIL)
■男子重量級 (Men’s Super Heavy Weight +90kg)
優勝/コバレンコ コンスタンティン (I.K.O.ロシア/総本部道場)
1st Place/KOVALENKO KONSTANTIN (I.K.O.RUSSIA)
準優勝/西村界人 (I.K.O.日本/東京城北支部)
2nd Place/NISHIMURA KAITO (I.K.O.JAPAN)
3位/エキモフ マクシム (I.K.O.ロシア)
3rd Place/EKIMOV MAKSIM (I.K.O.RUSSIA)
4位/ルジン アンドレイ (I.K.O.ロシア)
4th Place/LUZIN ANDREI (I.K.O.RUSSIA)
一撃賞/大秦稜司 (I.K.O.日本/京都支部)
■女子軽量級 (Women’s Light Weight -55kg)
優勝/カザリアン アレクサンドラ (I.K.O.ロシア)
1st Place/KAZARIAN ALEKSANDRA (I.K.O.RUSSIA)
準優勝/鈴木千凌 (I.K.O.日本/東京城南池上支部)
2nd Place/SUZUKI CHISHINO (I.K.O.JAPAN)
3位/アルテメワ・ナタリア (I.K.O.ロシア)
3rd Place/ARTEMEVA NATALIA (I.K.O.RUSSIA)
4位/森岡優海 (I.K.O.日本/東京城西国分寺支部)
4th Place/MORIOKA YUMI (I.K.O.JAPAN)
■女子中量級(Women’s Middle Weight -65kg)
優勝/小城みなみ (I.K.O.日本/千葉北支部)
1st Place/KOJYO MINAMI (RUSSIA)
準優勝/知念琉花 (I.K.O.日本/神奈川横浜北支部)
2nd Place/CHINEN RUKA (I.K.O.JAPAN)
3位/コズロワ エカテリーナ (I.K.O.ロシア)
3rd Place/KOZLOVA EKATERINA (I.K.O.RUSSIA)
4位/本村愛花 (I.K.O.日本/東京城東北千住支部)
4th Place/MOTOMURA AIKA(I.K.O.JAPAN)
■女子重量級 (Women’s Heavy Weight +65kg)
優勝/ザベリナ・エリザベータ (I.K.O.ロシア)
1st Place/ZABELINA ELIZAVETA (I.K.O.RUSSIA)
準優勝/宮本 神 (I.K.O.日本/本部直轄浅草道場)
2nd Place/MIYAMOTO JIN (I.K.O.JAPAN)
3位/カルポワ・エカテリーナ (I.K.O.ロシア)
3rd Place/KARPOVA EKATERINA (I.K.O.RUSSIA)
4位/田崎佑麻 (I.K.O.日本/広島支部)
4th Place/TASAKI YUMA (I.K.O.JAPAN)
■今大会にご協賛いただいた各社様(順不同)
KAATSU JAPAN株式会社
シダックス株式会社
太平地所株式会社
イディアグループ
B ZONE GROUP
カトープレジャーグループ
志太塾
株式会社プロアホールディングス
塩原カントリークラブ
極真会館北大阪支部
株式会社サン・ラック
有限会社星野工務店
エクステリア ダイヤモンドムーン
株式会社極真会館メディカルマネジメント
シィード建設株式会社
南栄商事株式会社
株式会社ミエラセン
株式会社アルファウェイ
極真会館東京城西支部・前島康夫
蔵本整骨院
株式会社Top Rank
有限会社メトロビル管理